身延町付近にはオハツキイチョウが多く、国の天然記念物に指定されたオハツキイチョウは日本全国に7本ありますが、そのうち3本がここ身延町内にあります。上沢寺のオハツキイチョウはそのうちの1本です。1929(昭和4)年に国の天然記念物に指定されました。「さかさ銀杏」とか「毒消銀杏」の名で、昔から「霊樹」として地域で守られてきました。山梨の巨樹・名木100選でもあります。

オハツキイチョウは、イチョウの変種で、葉の上に種子を付けるイチョウのことをいいます。上沢寺のオハツキイチョウは、幹囲6.6m、樹高23mでした。

また伝説では、1274(文永11)年に、日蓮聖人が身延山入山の折、携えたイチョウの杖を日蓮聖人の身代わりとなって亡くなった白犬のお墓にさしたのが芽吹いたとされ、杖の形状に名ぞらえて幹が天に向かって伸びないで地面に向かって伸びている所から「さかさ銀杏」の名称が名付けられたようです。

2001(平成13)年度から2004(平成16)年度までの4年間をかけて、樹勢回復のための保護策を実施するなど大切に守られてきましたが、2018(平成30)年9月30日の台風24号の強風によって、根元付近から折れて倒伏しました。

樹木医会で調査したところ、倒れた幹の浮いた部分は根が切れていましたが、まだ根が残っている部分もありました。根が切れないように幹を起こし、まず枕木で仮支えをした後に鉄骨で幹を支える工事を実施しました。

経過を見守ったところ、倒伏した翌年の2019(令和元)年5月、横たわった状態の幹や枝から再び新芽が出始め、その後複数の「お葉付き」の実(ギンナン)が結実したことが確認されました。樹齢750年の老木の蘇生復活に、上沢寺関係者をはじめ地元の人々は期待も大きくなっています。

台風で折れる2日前の2018(平成30)年9月28日に撮影したオハツキイチョウ(上沢寺提供)

台風で倒れたオハツキイチョウ

枕木を入れて幹を支える仮設工事

鉄骨で折れた幹を支えている

簾の下の新芽も成育

新たに芽吹きを確認