令和4年3月撮影

山高神代桜(やまたかじんだいざくら)は北杜市武川町の実相寺境内にそびえる推定樹齢2000年とも言われるエドヒガンザクラの古木です。樹高10.3m、根元・幹周り11.8mもあり、日本で最古・最大級の巨木として、1922(大正11)年にサクラとしては第1号の国指定天然記念物となりました。福島県の三春滝桜、岐阜県の根尾谷淡墨桜とともに、日本三大桜と呼ばれています。

天然記念物に指定された後、1935(昭和10)年頃までは、樹勢は比較的安定していましたが、徐々に主要な枝が枯れ始め、1959(昭和34)年には台風により太枝が折れ、被害は甚大なものとなりました。1984(昭和59)年には腐朽した主幹保護のために屋根つきの櫓が架けられましたが、樹勢は著しく衰退していきました。2001(平成13)年に文化庁、山梨県と武川村(現在の北杜市)教育委員会、大学や試験場の研究者、樹木医などからなる樹勢回復調査検討委員会が組織され、調査が進められました。その結果、天然記念物に指定された後に、石積みによる囲いの設置と盛土を2回行っていることが分かりました。特に2回目の1971年には盛土が40~80㎝され、根圏に大きな変化をもたらしていたのです。盛土は一時的には樹勢回復に効果があったようですが、古い根への酸素供給が乏しくなり、地中深い所では根は枯れていきました。さらに盛土した土層は、土壌生物相が単純化し、そこに伸びた根にはネコブセンチュウが蔓延、瀕死の状態を招いていました。

樹勢回復工事は2003(平成15)年から始まり、工事は雲松園(小林稔蔵樹木医)が担当しました。石積みで囲われていた根元周りを8分割し、毎年2カ所ずつ土を入れ替えていきました。根圏環境を改善することで、新たな発根を促しネコブセンチュウ病は、拮抗する土壌生物(主に有用な微生物)で抑制することとしました。

工事は3年を経て樹勢回復の兆しが見られるようになってきました。新梢の伸長、不定芽の出現、早期落葉の改善、新たな発根などが確認できました。発根は1年で1m以上になるものもありました。

しかしながら樹冠上部の枝の枯損、葉の矮小化など症状が改善されない部位もあり、予断を許さない状況は続いています。

治療前の根の状況

根に水苔を巻いて養生する

3年後には工事の成果が徐々に現れ、新たに伸びた根が確認できました。

工事3年後 不定芽の出現

工事3年後の全景